「省エネ・経済性」には社会と家庭の次元での問題があります


快適さ」とは身体への優しさです。
特にお年寄りや小さなお子様がおられるご家庭では、この「優しさ」が喜ばれます。
ホコリも立たない静かな暖房,健康的で経済的、いつでも安心してご使用いただけるのが「床暖房」です。

床暖房の暖かさは微妙です。特に蓄熱式のそれは、微かな遠赤外線が床から無数に飛びだして、そこにいる人を丸ごと包んでジワリジワリと暖めます。皮膚に当たる暖かい刺激としても微妙。それもそのはず、蓄熱式の床表面温度は21〜22℃ほど。体温よりずっと低い温度でじっくり暖める、という方式。
その状態を比較してみますと…

1.室温が22℃でじっとしていると体の芯から冷えてくる,というケース

たとえ室温(空調機による空気温度)が22℃ほどの部屋でも,冷めたい床の上に立っているとジワジワと体温がうばわれ、最後には体が冷え切ってゾクゾクッとくることがあります。美容室や床がコンクリートの店舗にいると,それまでは暖かだったはずが,屋外にでたとたんにやはり、ゾクゾクッと寒さを覚えることがあります。熱気に満ちた居酒屋でお酒を飲んでいたお父さんが,店から外に出たとたんに大きなクシャミをする、というのは、サイフの中身のせいばかりではありません。それは、部屋の空気は暖かいのに、冷えた床や壁がジワリジワリと体温をうばっていたせいで、屋外の冷気に触れたとたん、「ハックション」というワケ。

2.室温が22℃でじっとしていると体の芯から暖まってくる,というケース

床暖房による暖房効果で室温が同じ22℃の部屋に立っていると,初めは「これで暖かいのかな?」と感じられますが,そのうちに体温が安定してきて、「暖か」というより寒暖を意識しなくなってしまいます。その状態で寒い戸外へ出ても,体が芯まで暖かくなっているので、しばらくはあのゾクッとした寒さが感じられない、ということがあります。

問題は「体温の維持」です

床暖房は人間の体温維持に適している、といえます。体温の放出が早ければ「寒い」,遅すぎれば「暑い」、ということになりますが、その体温の放出をコントロールするのが,赤外線輻射熱による暖房の特徴です。
輻射熱で柔らかく包んで体温のムダな放出を押さえる、それが床暖房です。

「日本床暖房協会」が紹介する床暖房を使用中の方々へのアンケート記事では…
冷え性が和らいだ 足の下ばかりでなく、床暖房の輻射熱は部屋の壁や天井からも輻射熱が発せられて初めて、暖房としての機能を発揮しています
不快な風を感じなくなった この結果、肌の乾燥度を測定すると,2時間経過しても乾燥は押さえられていた
空気がクリーンな感じがする 空気の対流がほとんどないので,そもそもホコリが立ちません。空調機やファンヒーターなどのようにファンモーターやファンの風切り音など、騒音がありません。これらが静かでクリーンな環境イメージを作りだします。お子様やお年寄りにはなによりのクリーンさです。
寝つきが良くなった 床暖房のほどよい暖かさは,とても自然です。空調機器が暖房を消すとすぐに冷えだすのと違って,床暖房で暖まっていた部屋は余熱が残っていて、就眠時にも寒さをあまり感じさせません。
「体温」と「床暖房」の関係

輻射熱=遠赤外線による暖房負荷(効果)の考え方
「体温」という人が体内で作り出す「熱」は主に筋肉・臓器により作られています
その比率

骨 格 筋 59%
呼 吸 筋 9%
肝   臓 22%
心   臓 4%
腎   臓 4%
そ の 他 2%


○ 人は安静時に体重1kgあたり約1Kcal/hの熱を作ります(基礎代謝)。
○ 栄養分(糖・蛋白質・脂肪)が代謝されてエネルギーが発生。このエネルギーは機械的・電気的・化学的エネルギーに約30%ほど使われ、残りは「熱」として放散されます。

 この前提で考えると、体重60kgの人は1時間に1kcal×60×0.7≒42(kcal/h)の「熱」を放散していることになります。これをW(ワット)に単位変換すると、約49W/hの熱を体表面から放散できている状態が平静状態といえ、これは言い換えると、「暑い」「寒い」を意識しない快適な状態といえます。
 ただし生理学では、快適なのは平均値として「42〜43W/h」だといいます。ここでの誤差は、体重が60kgであっても、身長との兼ね合いとともに体表面積(放熱面積)という個人差が、熱の放散量を変化させると考えられるので、この一般的な生理学の統計値「42〜43W/h」を「快適指数」とするのが妥当と思われます。

 これらのことから展開して蓄熱量や床表面温度の目標値が割り出されますが、その実験での結果は上の概説にほぼ合致します。床表面での熱量の目安は90kcal/u・hで、65uの床面積では5,850kcal/h=6.8kW/hが暖房負荷の目安となります。
※ちなみに温水マット方式(東ガスTESなど)では120kcal/h.u
 体温放散は赤外線によりおこなわれるので、それに対して仮に43W/hを維持するには、それと同量の「43W」の赤外線で人を照射する熱環境を作り出せばよいことになります。
 この赤外線(厳密には遠赤外線※)の性質は、物に当たってから熱に化けますが、同様に体表面に当たってから熱になります。そのようにして人を暖めることになります。
 熱は温度の低い方(温度勾配)へと逃げるので、人体表面から出る熱と環境の与える熱量を同期させると、熱の移動はおこらず、これを平静状態(快適)と考えます。外出先から帰った人の体温が少し落ちていて寒気がする場合には、室内の赤外線は勾配として人に傾き、暖房効果を与えます。逆に、家事労働等による体温上昇時には、体温放散を妨げません。この熱移動のバランスが床暖房の特徴です。
 一方、空調による暖かい空気は、その保温効果により人を包むため、体温低下の人にはしばらく暖かく感じられるわけですが、その後の体温上昇により「暖かすぎる」という保温過剰な状態を作り出してしまい、家事労働をしている人にも同様な不快感を与えます。それに加えてさらに対流による上下の温度差が感じられるようになり、「不快感」は増長されます。それを補正して数値的にはっきりした「快適指数(42〜43Wの体温放散)」を目指し、次にそれを維持すべく適度な熱環境を作り出すのは、空気調和方式では原理的に至難のワザとなります。
 人体よりの適正な熱の放散を維持することは「快適性=健康」を意味し、そのためには、人体表面に対してより直接的な熱エネルギーを与えてバランスをとることが有効で、これを蓄熱式床暖房は実現します。
(「床暖房だから足元が暖かい」という表現は遠赤外線効果の消極的表現です)
 ここで最大限にその「床暖房効果=遠赤外線効果」を発揮させるには、建物の「断熱性能※」への留意と、「快適指数」を維持できる床下での蓄熱量のコントロールが必要になります。
「快適=健康」という等式の維持は、お年寄りなど代謝活動の低下(体温低下)した方への健康管理にも有効です。無風で埃の立たない蓄熱式床暖房は全面床暖房であり、家の中でのヒートショックを大幅に軽減し、特定箇所に湿気を集めることもなく、押入れやウォークインクロゼットなどの衣類も湿気ることがなくなります。これらは「快適さ※」というものが暖房効果ばかりではなく、「清潔感」という心象イメージの良さから生理的心地良さに反映され、真の快適さへとつながります。
 快適・健康・経済的・清潔・安全・省エネ、これらの条件をクリアーするのが蓄熱式床暖房です。

※快 適 さ…「不快指数」が温度と湿度の関係で快適性について表現する方法なのに対し、「快適指数」は生理学的指標をモデルとして使っています。床・壁・天井などが帯びる温度を目安とし、それらが近似していることがポイントです。湿度は一定として考え、「物」に溜まる温度分布が主な要素となり、空気温度は二次情報となります。
 (空調機による暖房時の湿度低下は空気の膨張による湿度密度の低下によります)
※遠赤外線…赤外線は「近・中・遠」と分類されていますが、周波数的に人体に熱的効果をもたらしているのはこの中の「遠赤外線」です。この周波数帯は8〜13μmで、健康器具などでよく「遠赤外線効果」と喧伝されていますが、決して特別なものではありません。太陽光にも自然に含まれているとともに、熱を帯びた物体から熱が他へ逃げていく場合、多くはこの「遠赤外線」の形で飛散します。
※ 断熱性能…一般的に床暖房設計上の負荷は、20年以前から東京ガスなどガス会社による実験値により、120kcal/u(木造・一階)〜130kcal/h(木造・二階)を目安としました。しかし最近では建物の断熱性能が向上し、RC構造でも一般住宅は内断熱・外断熱といった具合に保温を重視する傾向が顕著です。その結果、暖冷房は断熱性能で大きく左右されることが再認識されてきました。暖冷房効果も維持費も断熱・気密性能次第です。
 いまではこの性能確保はお施主様からの強い要望として表われ、建築条件になってきています。暖房負荷は100kcal/u前後で良く、さらに「高断熱・高気密」とはっきり表示された建物では80〜90kcal/hでも暖房可能となっています。
 これらを踏まえ、蓄熱式では熱源機自体の出力も従来の半分程度の能力で対応可能となっており、維持費も半減しています。
これに加え、近年「オール電化」を希望するお施主様も増えつつあり、従来なら能力的に敬遠していたヒートポンプ熱源機も採用可能となっています。特に即暖性を要しない蓄熱式の場合、時間をかけて蓄熱すればよいのでこの種の熱源機使用にも適しています。






「熱」「自然な性質」を知れば「熱」「自然に利用」できます
  「暖かく」する、そして「涼しく」する。…同じことなんです。
   「空気」という気体の浮気な性質に頼らない工夫。