温水・冷水を作るヒートポンプ。「省エネ」の実際的な形がこれです。


<床下空間での温度・湿度・結露の関係>
※2016/4/21 一部加筆しました
※質問に応して加筆したため全体の文章構成に不整合があります


※蓄冷式床冷房では当然ながら「結露」を心配される場合が多いため、 このページがあります

--最近の木造建物の特徴と考え方--
  

歓喜や調湿をどう考えるか?
これだけは知っておいてください……。


 コップに冷たい水を入れるとすぐに結露が始まります。この体験は日常的で全人的です。
 だれでも理屈抜きで知っているこの結露現象。
「冷やす」=「結露」という公式。冷やせば結露する…?
 これは確かにありふれた現象で疑う余地のない日常生活では敬遠すべき自体です。放っておくとロクなことがない。衣服が湿る、放置されたホコリは湿気を吸ってカビが生え、などなど湿気は大敵。
 その一方で、加湿器の使用。乾いた空気は風邪などのウィルスやカビ菌などが浮遊しやすく、感染症を引き起こす恐れがあり、特に喉や気管が弱い人たちはとても気になる問題。それで冬などの乾期は加湿器が手放せない、などなど、「適度湿度」をもとめて人は苦慮します。
 加湿器の過剰な使用はもちろん結露問題につながります。湿度設定が可能でも、加湿された空気は重く、室内に偏在して残ります。
 ことほど左様に湿度管理は厄介です。
 特に最近の新しい木造建物では、その断熱機密性能の向上から、鉄筋コンクリート造の建物と同様な衛生管理を心がける必要があります。特に気密性能の良さは温度・湿度管理において注意を要します。
 こう書いてくると「困難さ」を強調しいているようですが、それはちがいます。
 必要なのは建物性能の向上を活かすこと、です。
 高断熱・高気密であればこそ、実は室内環境をコントロールしやすくなっています。性能の良いスポーツカーを乗りこなすにはテクニックが必要です。同様に性能の良い建物もこれをうまく利用して快適環境をつくりだす努力が必要です。
 最近の新しい建物ではたとえば、結露しにくいペアガラスの窓が標準で取り付けられています。この窓は「結露しにくい」のであって「結露しない窓」、ではありません。条件がそろえば「物」はなんでも結露、あるいは吸湿します。
 こうした「結露」現象のクレームでは、暖房屋もまたよく呼ばれます。確かに結露は温度と深い関わりがあります。ペアガラスの窓が結露でビッショリ。その光景を何度も目撃しています。そんな際は建築家も困惑の表情。「結露しないはず」の窓がしっかり濡れていて、しかも水滴がしたたっている。ちょっと見にはびっくり仰天の事態が発生し、「暖房(冷房)」のせいだ、と、騒ぎになります。
 が、そうではありません。新しい建物を使用者が使いこなせていないのです。
 それぞれが「快適環境」を目指して工夫を凝らし、創造された家です。少なくても昔の建物よりはマシ、ということを信じましょう。 そして次には、もっと積極的にコントロールしましょう
(右上の項へ)
(左の項よりつづく)
  結露し難いはずの窓が結露した、というケースでは、室内と外気の温度差が要因の一つですが、なにより室内換気の不十分さ、というより換気扇・レンジフードの使い方が「無意識的」すぎる、といういことが問題です。冷たいコップ、あるいは冷たいガラス窓に湿った暖かい空気を吹き付ければ見事に結露しますが、それがボタボタの結露にするまでには、軽ざく的な湿気の供給が不可欠なんです。無意識にしろ、これは人為的な不始末です。
 最近の建物の間取りでは、キッチン・リビング・ダイニングのスペースが広く連続空間として
られ、それゆえに開放的で、同時に家族の様子を見守れるというアットホームそのものの演出効果を確かに持っています。賢いママたちは家族を見守ることの具体性をよく理解しています。物理的空間として自分の立ち位置からすべてを見渡せることは、必須条件なのです。
 特に幼児は見守られている環境で遊ぶことを好みます。幸せそうです。それは良い。グッドです。
 それでママ、さらに注意することは、室内の空気環境です。もしもこのとき、窓が結露していたら、それは子供を見守りつつ調理中のあなたが、レンジフードの換気出力を「弱」とか「中」で作動させているからです。さらにこのとき、排気ばかりでなく、「換気」というからには、「給気」にも配慮しているでしょうか?
 給気口の確認なしにレンジフードを作動させると気密性の高い建物では、外気の圧力(大気圧)に対してより低い「負圧」になります。よくレストランなどの入口ドアが室内の負圧のせいで開きにくいということがありますが、まさにその状態です。給気に対して排気の力が強すぎる状態で、つまり換気の効率がかなり下がっています。内耳の敏感な子供はかすかなストレスを感じているかもしれません。
 それ以上に、そもそも「換気できていないですから」と、お伝えせねばなりません。
 あるいは電気の節約から、調理中は「強」で運転すべきところを「中」「弱」で運転してませんか?あるいは換気の意味をぜんぜん意識していない。
 ダメです。性能の良い家を使いこなす知恵が必要です。
 湿度の高い低いより、湿度が連続的に供給されているか否か、それが問題ですから ! !
 家庭も武装しましょう。性能の良い「温湿度計」で。それをときどき見ていれば、あとは慣れて皮膚感覚で環境の善し悪しを瞬時に判断できるようになります。ヤカンでお湯を沸かしていても、換気が悪いと室内の湿度は急激に上がり、しかも連続的にかなりの濃度の水分を供給するため、簡単に結露は、生じるべきところに生じます。
 キッチンの換気効率は、同じキッチン内のしかるべき位置に付け、調理中はガンガン回す、くらいのつもりで湿気を排出すべきです。
 もっとも、冬の湿気が嫌いなら、です。窓ガラスくらい濡れてても大した問題ではない、と鷹揚に考えるママは、それはそれであっぱれです。ときには、動じない態度もまた、子供にとって頼もしい愛すべき保護者となることでしょう。

 こう考えてみてください。逆に、ひどい「結露」を起こすためにはどうしたらよいか?その条件とは何か、と。
 ひどい結露を発生させるには、第一に結露を帯びることになる物と周囲の空気の温度差、さらに空気中の湿度、ことに重要なのがその湿った暖かい空気が常時、間断なく供給されること、などが条件になります。
 これらの条件が満たされないと、実験してもなかなか結露は起こりません。結露を起こす物の性質も大きく関わります。木材、コンクリート、大理石などの石といった、それぞれ比熱の違う物体によっても結果は変わってきます。いわば熱交換の速度がそれぞれで相違し、結露したりしなかったりします。
 結露のための良い条件は、比熱が高くて伝熱の良い冷えた物体と、それよりずっと高い温度の湿った空気が常時移動してきて物体に触れている、という動的な環境が必要です。
 「動的な環境」とは、同じ空間内へと常時「新鮮で温度が高く十分に湿っている空気」が継続的に入り込んでくる環境、という意味です。空気を動かすと思いもよらない結果がでてくるということです。
 最近ではアイランド型キッチンなどでスマートなレンジフードが装備されていますが、この換気ファンをいつも「弱運転」で使っていると、調理時に発生する多大な水蒸気がフードからあふれ、室内に充満しているというケースが見受けられます。特にエアコンなど空調機にのみ頼っている場合、換気は暖冷房効果を下げるため、倹約のつもりで換気速度を低くしている場合もあります。
 こうしたケースでは、L.D.Kと呼ばれる通り、一体空間で広いスペースを占めている最近の間取りでは、人為的な湿気は一層室内に拡がります。空気を「蓄熱体」とするとそういう結果になります。
 ですが、熱(冷熱)を物に溜めると空気蓄熱より換気に左右されにくくなります。それゆえに、暖房時はともかく、床冷房に限っては室内空気との温度差と人為的に充満した湿度により、結露の条件が整ってくることにもなります。

 いずれの場合も、中途半端な判断を下すと確かに思わぬ事態が発生することになります。ただし原因が分かっていれば、一度の結露なら教訓として生きるでしょう。次はどうするか、もはや方法は明らかです。その結露の条件に少し手を加えればよいだけです。

 そのほかに、建築期間での季節や天候により、新築建物には多大な湿気が残ることがあります。建築初期の期間に雨が続くなど、不可避的にそうなることもしばしばです。たとえ調湿効果のある壁材を採用しても、最初はすぐにそうした自然湿気を吸い込んで、調湿材料は飽和状態からスタートすることもあり得ます。季節が良ければ入居後には積極的に窓を開放し、乾いた風を通して除湿することはかなり有効な手立てと思われます。
 先に説明させていただいたように、「動的な環境」は状況によっては良い条件になります。空気の流れは、単に日を当てるより乾燥時間を早めるかもしれません。運動していてる空気の仕事量は大きい、と考えるべきです。
 ときにはこの仕事量が余計もので、ときには頼もしい自然の力とでもいった、使い方によって建物は保全され、さらに快適な空間を作る方法を暗示させてくれます。

 床冷房はそのままでは除湿ができません。
 かといって、そのために除湿装置をシステムに別途付加することはイニシャルコスト的に不利です。それより、すでにして優秀なエアコンが数多くあり、しかも量産により価格も手頃ですので、床冷房に既製のエアコンを併用することは理にかなっています。
 その上で、床冷房の第一の目的は「
電気代の節約」です。安い深夜電力を積極的に利用し、昼間の高い「夏期特別電気単価」の使用を控える目的で、床暖房システムのオマケ機能として床冷房を採用する、という考え方をモアでは採用します。
 ヒートポンプ式蓄熱での床冷房は、床暖房工事費用はそのままで、熱源機のヒートポンプのみ、冷房機能を持った機器を採用するため、その機器代の差額のみアップ(7万程度)
するので、全体予算としてはその分だけ高くなる、というものです。 エアコン一台より安いコストアップです。
 夏休み、お子様が一日中家にいるとします。近年の猛暑ではエアコンなしには過ごせません。オール電化の家で昼間に二台のエアコンを運転させていると、どれくらいの電気代がかかるでしょうか。一台の消費電力を600Wとすると、410円となります。この運転を夏休み中、朝8時から夜の9時までつづけますと、電気代は16,400円/月となります。
 現在、部屋ごとにエアコンがあるお宅は多くなっています。実際には二台だけの運転で済むでしょうか。熱帯夜もあります。部屋ごとにすべてのエアコンを使ってはいないでしょうか。
>>>理屈よりも簡単な実験で結露の様子がわかります
 まず、部屋の温度をエアコンで25〜27℃に保ちます。 コップを二つ用意し、一つを、もう一つをとします。
 には10℃(冷蔵庫で冷やした水)を入れ、もう一つのには水道水の水(夏なら22〜25℃程度)を入れます。これで結露の実験になります。
(常温180ccの水に冷蔵庫の製氷機で作った角氷を一個入れると、だいたい20℃前後の水になります。この20℃の水で実験しても構いません。実感できる大体の目安が得られれば目的は達成されます)
 はだれでも経験している通り、すぐにコップの表面が曇り、結露が始まります。
 重要なのはですが、結果的に結露は起こりません。
 さらに詳しく試すには、部屋の温度と湿度を変化させて比べてみれば、どの範囲で結露が起こるかが分かります。

 床冷房の場合、床温度は25℃前後まで冷やします。理屈より実験が手っ取り早いため、盛夏にこの温度まで床を冷やした結果、この温度範囲が実際的な有効温度と判明しました。
 同時に、この「有効温度」は建物の「断熱性能」や「換気」の条件も関係します。実際に敷設していただいたお客様の中には、「27℃が快適」とおっしゃる方もおられます。そのように設定温度に巾があるのは、これら条件の応用に関わってきます。
 冷房について国の示す省エネ温度(空気温度)「28℃」はたいていの場合不快ですが、この「28℃」で快適といいうる条件は、湿度、室内の壁や天井・調度品など「物」・人の体温を含む総熱量、窓から来る太陽の輻射熱量により相違します。温度という間接的な数値ではなく、総熱量が問題です。直射日光が当たっていなくても、日陰の窓からも乱反射による輻射熱(赤外線)は多量に入ってきます。これも不快な原因としてのウェートは大きなものになりますが、窓ガラスの外側に赤外線をカットするフィルムを貼るなどの対策を採れば有効です。赤外線をカットする「性質」とは、端的には金属質の電導体である素材がそれです。

※「結露しない」ということは「除湿しない」ということでもあります。
  そのため除湿にはエアコンを弱運転で併用します。
  深夜蓄冷の最大の目的は「電気代の低減」です。

●問題となるような激しい結露が起こるのは、結露面を挟んで表裏の温度差が大きいことと、結露側の湿度も補給されつづける(空気の運動が激しい)という条件が満たされた場合です。
これを逆に言えば、通常の床下で結露を起こしつづけることもまた、なかなか困難です。そのためには常時、新鮮な湿った空気を補給し続けなければならないからです。


※この図は手書きのグラフのため若干の誤差があります
<説 明>

「結露」について、計算値ばかりではない実態的な場面を想定し、対応可能な許容範囲・実際性についてこそ検討する必要があります。
上のグラフの「折れ線」は空気の温度変化とともにその飽和点が比例することを表わし、同じ意味ですが「折れ線」は各温度における湿度100%の状態を示しています。
 物理的な運動にはすべて「時間」の経過が関わりますが、実際に「
湿度」の問題を考える場合も同様です。冷たい水の入ったコップの表面に結露が起こる場合、ガラス面を通じた熱交換の時間経過と、それがさらに湿った空気に触れる熱交換までの時間経過があります。
 冷水のコップが置かれ、
熱交換が始まり、徐々に結露してゆく、この現象は冷水がまわりの空気温度に達するまでつづき、止まります。
 上のグラフは、例えば湿度60%の25℃の空気が即時に15℃まで冷やされた場合、その湿度は106%となり、空気中の水分は飽和状態を6%超え、その空気を冷やしている原因である冷熱源に水分が付着する、というイメージを示します。
 これが「結露」です。
 逆に、この結露現象を24時間維持するにはどうするか、と考えます。
 冷熱源(コップの水)は15℃を維持しつづけることと、空気中の水分が100%以下にならないよう、加湿器などで連続的に水分を空気中に補給し、同時に周囲の「物」の温度が空気温度と一致するまでつづきます。

 さらに実際の運転は下図のような設定でおこないます。


実際の蓄冷運転での温度・湿度の変化

 湿度70%の30℃の空気が密閉空間で一気に25℃まで冷やされた場合を考えます。
 温度30℃・湿度70%の空気1立方mには約21gの水分が含まれます。
 温度25℃で21gの水分を含む空気の相対湿度は92%となり、結露の一歩手前といったところです。
 これをさらに20℃まで一気に冷却すると、相対湿度は123%となって飽和点を超え、約3.92gの水が結露の水量となります。
 面積65uの建物での床下空間を約39立方mとすると、上と同じ条件での結露の水量は3.92×39≒153gとなります。これはコップ一杯弱の分量に相当します。

 ところで
「蓄冷式床冷房」での実際の結露はどうかというと、床下のほぼ密閉された空間では、水分の飽和点を超えてさらに連続的に水分が補給されない限り、結露現象は起こりません。そもそもの水分量が一定のままなので、湿度は低下してしまうからです。
 この程度のオーバー分の水量(コップ一杯弱)では、実際には空気中の水分は吸湿性のある「物」へと移動してしまい、相対湿度は結露点を下回ります。グラフ内の
「相対湿度低下」はそのイメージを示しています。
 最近の吸水性調湿ボードや通気性のある壁紙は、そのようにして余計な湿気を吸収するようにできています。
 「蓄冷式床冷房」においても、蓄熱体であるコンクリートが湿気を吸ってしまいます。特に
蓄熱暖房をして一冬を越えた蓄熱体は、乾燥しきって吸湿性が上がっているため、コップ一杯の水程度では結露に至りません。



 実際の蓄冷運転では、30℃の空気を20℃まで下げるのに8時間以上かかります。暖房の場合でも同様で、同じ能力なら8時間を要します。
 ただしこのあと、建物の保温能力にもよりますが、蓄熱式の特性として、下げた温度は簡単には上がらず、暖房時も上昇させた温度は簡単には下がりません。
 冷房時の相対湿度は時間経過とともに刻々と変化し、飽和点を越える前から、湿気は周囲の物へと熱交換とともに移動します。ほぼ自然な形でそうなります。普通でも夏期の湿度は昼と夜の温度差でよく運動します。通常の床下では、外気に開放されているため、常時その影響を受け、湿気が温度差とともに出入りしています。その湿気もまた。土台や他の木部が通常は自然の範囲で呼吸しています。
 逆に
結露を強制的に起させるには、連続的に不足した水分を床下空気に補うことが必要です。実際の場面でその条件に合うのは室内側で、調理などが連続的で多量の水蒸気を発生させるため、換気が悪いと室内のどこかで結露を招くことがあります。この場合は冬期の空調暖房のほうが結露しやすくなります。
 このため夏期ではエアコンや除湿機は対策として有効になります。
 床冷房の場合にも除湿は必要になりますが、次の「冷房環境と実際の運転」の項で説明しています。
「冷房環境と実際の運転」
-蓄冷式床冷房-


 通常ですと空気温度が上昇すると湿度は低下し、温度が下がると湿度は上昇します。これが相対湿度の基本的な性質です。
空調機器の場合、室内空気を一気に冷却するため、そもそも結露は冷房機内の熱交換器で発生し、それをドレンパイプで屋外に排出することにより室内の湿度を低下させています。
 蓄冷式の冷房の場合、湿度と結露の問題を室内と床下空間それぞれ別に考える必要があります。

 まず、
床冷房運転中の室内側では湿度変化は起こりません。室内がひんやりしても、室内空気に対して床暖房と同様に間接的にしか影響を与えないためです。
 普通は「
暖房」「冷房」というと、どうしても空気の温度を連想します。
 ですが、
床暖房床冷房では、「赤外線の働き・性質」によって効果を期待するため、空気には間接的にしか影響を与えません。
このことは「湿度」についても同様で、あまり影響を与えません。
ここでは話を床冷房に限定しますが、室内の人を含む「物」に含まれた熱が、それより温度の低い「物」へと赤外線の形で熱が移動する性質を利用したのが、
床冷房です。
 「結露」の問題ですが、室内の床表面ではどうなるでしょうか。下の図をご覧ください。


※ベタ基礎で床を直張りしている例では・・・
 このケースで床に結露させるためには、実際には床表面を20℃以下まで冷やすとともに、湿った空気をファンなどで吹き付けないと結露は起こりません。床冷房の場合、床表面温度が20℃だと冷やしすぎで足元が不快になるため、おのずと結露するまで冷やしません。
床冷房時の床表面温度の目安は27℃程度です。
※「それでもうっかり冷やしすぎたらどうなる!」
 と、現場主義の工務店さんは慎重です。疑い深いわけではありません。直接に責任を負う立場として、これは好ましい疑義です。「完璧」がいかに困難なことか、経験者はよくよく承知しています。
 結露は床冷房を採用していなくても起こりますし、床暖房時にも条件によっては床下で結露を起した例が確かにあります。それが「床冷房」であるなら、これはさらに要注意と警戒するのは至極当然なことです。
 そして心配の通り、、冷やしすぎたら
、確かに結露します。
例えば二、三日間連続運転をして床温度を20℃前後まで冷やし、そこへ窓を全面開放して猛暑を室内へと招き入れれば、どこかしらで結露が発生する可能性があります。
 実験ではなかなか結露が見られないのですが、浴室の洗い場など石やタイルなど、あるいはコンクリートの三和土では、冷やしすぎたそこへ暑く湿った外気を吹き込ませると、簡単に
結露します。フローリングなど木部の表面では伝熱が悪く熱の交換速度が遅いため結露しにくいのですが、冷やしすぎたコンクリートなどの材質表面では結露しやすいのは確かです。
「その場合、どうする?」
 幸いといいますか、ここがミソです。蓄熱式
床暖房は言い換えると乾燥設備です。モアの蓄熱式ではコンクリートを蓄熱体としていますが、その実際の建物での実験では、過剰に蓄冷運転をおこない、水溜りができるくらい床下の蓄熱コンクリート表面に激しい結露を起こさせ、次に暖房運転に切り替えて一晩すると、案の定、結露はきれいに乾きました。
 この実験では15℃の冷水を三日三晩連続運転で還流させ蓄冷しました。その間、昼間はさらに窓を開けて湿った重い空気を室内に取り込み、さらに床面に設けられた開閉式のスリット(換気口)を開けて室内の湿った重い空気を床下へと導く、というものでした。床下で結露らしい結露を起こすにはそうした条件が必要です。
 これは手動によるうっかり運転などによる万一の結露にどう対処するか、という試みでした。「たぶん」という推理の通り、暖房運転に切り替えて一晩蓄熱すると、コンクリとー表面はサラサラに乾いていました。それから定常温度にして設定タイマーによる自動蓄冷運転に切り替えます。 実際の運転では循環水温度はもっと高く、しかも自動で夜間のみ運転するため結露は起こりません。
 
※やはり、結露を起こすには暖かい湿った空気が連続で供給される必要があります。

◎床冷房は冷やすだけで除湿ができません


 
で、どうするか、というのがこの項のテーマです。
 除湿はどうするか・・・、と、実験段階でメーカーでも苦慮しています。床冷房ではなく主にパネル式の冷暖房端末機を使用して実験、あるいは製品としてすでに売り出しているメーカー(三葉製作所・東京神田)もあります。パネル式で有利なのは、必然的に結露するパネル表面の結露水を下に集め、ドレンパイプで排出することが可能で、それで室内湿度を下げることができます。こうした実験をモアも何度か手伝ったことがあります。これはこれで可能性を秘めています。
 ただし、モアの仕事は床暖房(床冷房)であり、複数のタイプの施工をおこなっていますが、なんといっても主力は「蓄熱式」です。長年の経験から、複数ある床暖房システムの中で蓄熱式がもっとも安価であり、しかも全面床暖房となるため快適さにおいて群を抜いています。すでに1000棟以上のご家庭で使用していただき、なによりお客様から「快適」とのお言葉をいただき、それを受けて「快適」とモアも申しております。
 こうした過程で、時代と共に熱源が灯油やガスから電気(ヒートポンプ)へと移行してきました。さらに、同じ機械で性質上は「冷水」も作れるため、蓄熱式床暖房システムのオマケで冷水を流す循環させるという、自然な流れで4年前より取り組みだしています。
 蓄熱式では暖房でも冷房でも、ここが肝心ですが、あくまで輻射効果を主眼に考えることに徹しています。これに関わる多くのホームページやサイトでは、ときには専門家が関わっていても、効果の評価において空調との混同がはなはだしいのが常です。このことに厳密でないため、評価にブレが生じています。とある国立大学の実験でも、その評価においてトンチンカンな推定評価をおこなっていました。
 結論を言いますと、暖房でも冷房でも、その効果においては熱を与えれば、あるいは奪えば、当たり前に暖冷房は出来ます。あとは負荷の問題です。温まらない、あるいは冷えなければ出力を上げるだけの話です。ここに現実的な家庭経済効果の視点を挟めばよいだけです。
 理想的にではなく、実際場面では、除湿はエアコンに頼るに限る、とモアでは考えています。「ヒートポンプ」はそもそもエアコンにおいて日本のお家芸となっています。進化している。これを利用しない手はない、と考えるのみです。除湿機との組み合わせも考えましたが、そもそもなんでエアコンに頼らないのか、と反論したくなります。こんなに質の良い日本の空調機ゆえにここまで普及してきたのです。値段も相対的に安い。
 空調機のもっとも特筆すべき点は、立ち上がりの速さだといえます。暖房でも冷房時でも同様です。わざわざ床の上に邪魔なものを置く必要はありません。パナソニックのハイブリット除湿機などは性能が良いと思いますが、その用途は、どちらかといえば室内干しの洗濯物の乾燥機として喜ばれているのであって、家全体の乾燥には不向きです。一室のみなら除湿機としても有効なのは確かです。
 ですが、最近のリビングの広さを思えば、これは能力的に頼りなく、やはりピンポイントでの使用に適していると思われます。15畳を超える空間では、空調的に見た室内の条件は換気なども絡み複雑になっており、時には短時間でも大能力のものが必要です。性能的に負けてしまうのです。
 実際問題、がモアの視点です。床冷房とからめた除湿機能は問題として大変面白いのですが、それではけっきょくのところ空調視野で考えざるを得なくなります。専用のシステムを想定すると、それほど困難ではないにしろコストがかかりすぎるのが最大の難点です。
 なぜ、これだけ普及してきたエアコンは嫌われるのでしょうか。 多くは「風」の問題です。「不快」といわれます。「快適さ」は、この要求において留まるところがありません。贅沢かと言えばそうではなく、これは環境についてのセンスの進化だと言えます。この進化の過程で、いま現在、「節電」要請でブレーキがかかり、「快適」についての進化は停滞期に入り、ヘタをすると退化へと至る可能性も微弱ですがあります。
 「暑いのを我慢する」、のも結構です。ですが、それでお年寄りが熱中症で倒れる事態も一方で問題として残ります。扇風機がよく売れているそうですが、これは「節電」への協力ということで、涙ぐましい日本の特技、「一億総なんとか」という我慢比べにすぎません。電力会社を倒産させることにモアも吝かではございません(公正取引委員会へ出向くなどモアは喧嘩を売っております)が、実際問題、電力不足がピーク時をどう乗り切るかという点に焦点を置いて考えるべきであって、一律に扇風機だ我慢だ計画停電だと騒ぐより、シフトできるものはシフトすることで消費電力総量を確保することが電気の売上低下を防ぎ電力会社の存続もなんとかなる、というものです。なにも値上げで対応することなどない、と思われます(余計な資産の徹底処分や経営合理化は必須ですが)。電気代値上げは断固反対にしろ、なし崩し的に東電のアホを腐しても始まりません。
 昼間、エアコンを使うにしても、その出力がおのずと下がる方法を採用することが現実的というものです。
 問題を限定しますが、冷房負荷を夜間に蓄冷して下げておけば、昼間の主に除湿目的のエアコンは勝手に出力を下げてくれます。湿度のみ下げて温度は下げないタイプ「再熱除湿」タイプというエアコンとの相性が良さそうですが、それでも消費電力削減の点で難があります。スタンダートタイプのエアコンの使用でも使い方次第でより除湿とともに維持コストは下げることができます。蓄冷運転により室内の粗熱が奪われているからで、それが床冷房の目的だといっても過言ではありません。
 快適進化を目指しましょう。暑くない寒くない、ほどぼとの温度環境は活力の源です。
  手前味噌の結論にて申し訳ございません。